高専実践事例集V
工藤圭章編
高等専門学校授業研究会
1998/12/20発行

   


  
こんな授業をやってます

   
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 まえがき(3〜5P) 浅黄谷剛寛 長野工業高等専門学校校長     

   


 このたび実践事例集V『こんな授業をやってます』を刊行しました。
 これまでの経緯を申しますと、平成四・五両年にわたり沼津高専が文部省教育方法改善等経費による「高等専門学校における人文科学・社会科学の総合化に関する研究」を行い、平成六年三月に最終報告をまとめました。その時のプロジェクトチームが数次の会合で披露された各教官の授業に対する対応を紹介するために、前記報告書とは別に、実践事例集『こんな授業を待っていた』を平成六年三月に刊行しました。さらに、そのプロジェクトチームを中心に、新しい参加者も加えて、第T集の補足として、実践事例集U『こんな授業をやってみたい』を平成八年七月に刊行しました。
 実践事例集T・Uの編集者であられた沼津高専の校長工藤圭章先生が平成八年三月にご退官、編集にご尽力をいただいた田代先生も平成十年三月に退官されました。平成十一年三月には前記プロジェクトと事例集T・Uの発刊にあたり、総指揮を取ってこられた藤枝先生も退官の運びとなります。

 このたび、今一度、第V集を発刊したいという気運が沼津高専の鈴木先生を中心に湧き起こりました。これは実践事例集T・Uの執筆に携わり、培ってきた力をこのまま失いたくないという気持ちのあらわれです。

 第V集の執筆者はT・Uの事例集のメンバーに新しい人を加えて、人文科学・社会科学だけでなく、理科・工学の事例も加えた横断的、縦断的なものになりました。したがって、学生に強烈なインパクトを与えられる事例が豊富に収められています。

 高専の教育は実験・実習を重視しているので、専門分野に関しては、高専卒業生は大学卒に匹敵するほどの評価を得ている部分もあります。一方、一般教育、特に英語と国語の非力が指摘されています。これは修得時数が少ないため、やむを得ないことですが、それを補完するひとつの手段として、他教科と関連づけた教育が特に必要になってくるものと思います。

 授業は少ない限られた時間内に、学生にどんな内容を与え、何を定着させられるかが問題であります。いたずらに暗記や記憶を求めるものではいけません。教官はまず、学生が興味を示す題材を与えられることが第一段階です。そこで得られた知識・内容等から学生自身が、自ら新しい命題へ興味を示し、課題を見つけ、自ら勉強したいという意欲を育てることが大事です。

 本書の事例は個々の教官による実践事例ですが、学生は複数の教官の講義を受けることによって、不足している部分や隙間を学生各自が埋められることが望まれます。
 平成十年六月、高専の今後のあり方調査研究会が佐々木高等教育局長の下に発足しました。ここでは従来から求められていた創造性のある人材以上に「課題探求型」の人材養成を行なうための方策が協議されます。そのような見地からも本書は有効に作用するものと確信いたします。

 第V集を発行し、さらに第W集、第X集と続刊できる力を保持、持続させることができれば、メンバーの生きがいのひとつにもなるかと思います。それは、これからの高専全体にとってもきっと大きな、かつ貴重な財産になることは疑う余地はありません。

 高等専門学校関係の研究等の発表機関は『高等専門学校の教育と研究』『高専教育』そして各校の紀要程度で、かなり限られています。そんな意味からも、本事例集は教官の研究業績の一つにも数えられることを願っています。そこに本書の発刊の意義が認められるかと思います。

 私が平成九年四月から長野高専へ赴任したことを機に、かつてプロジェクトの助言者をつとめたこともあって、編者に推挙されました。非力ではありますが、あえてお受けした次第です。

 本書の刊行に際して企画・編集にご尽力をいただいた藤枝教授、田代元教授に心から感謝の意を表します。また、ご執筆をいただいた諸先生方に心からお礼申します。

   平成十年十一月

                  長野工業高等専門学校長    浅 黄 谷 剛 寛

 

   
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