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HNK「赤とんぼ」vol.8 寄稿 2004/02/08 P29
《OBから》「AKSEC(All Kosen Scientific Education Community):アクセク とは」
 
平井良信(奈良高専電気工学科72卒)

 

夢みることがあります……

“彼はある日の夜遅く、明日から始まる15回シリーズのカリキュラムの切り口を
工夫したいと考えていたが、良いアイディアがなかなか見つからない。
そこで、AKSEC(All Kosen Scientific Education Community)の
メーリングリストに投げかけてみた。

すると5分と立たないうちにメンバーの釧路のH先生からのアドバイスのメール。
あっそうか、そういうこともかんがえられる、しかし…、
と疑問を返すと、今度は大分のS先生が違った解釈を投げかけてくる。
ふんふん、それもあるなあと思った瞬間、
高松のNさんがSさんの考えを発展させた極めつけのアイディアを打ってきた。
そして、30分後みんなの意見を基に思いもよらない形で考えがまとまり、
次の日の授業は満足できる内容だった。
いつもみんなに助けられる。
ほとんど会ったこともない全国のメンバーに。”

  今春から1年間奈良高専と大和郡山市が、高専の教員を小中学校16校へ派遣するという協定を結びました。奈良高専の教員82人が「スーパーサイエンスの達人」として理科や総合学習の時間に出前授業をしたり、高専の施設を使って授業をします。 出前授業には学生もアシスタントとして参加します。学生には教育効果も期待できますし、すばらしい取組みだと思います。ぜひとも成功し、またこの取組みが全国にある62の高専に広がり地域に貢献できることを願っています。

そこで提案です。

  全国高専のネットワークを作り、理科教育のカリキュラム開発や教材制作の情報を交流・共有し活性化することを目的にAKSEC(All Kosen Scientific Education Community)を設立します。全国高専教員約5,000名(@80名×62校)のネットワークが実現できればすごいパワーがあると思います。ひとりが一つのカリキュラムを提出すれば、それだけで5,000の事例が集まります。二つで10,000件です。何でもできるかも知れません。夢のヒューマンネットワークです。HNKはオブザーバーとして、また社会での経験を生かしたゲストティーチャーとして登録し参加しましょう。

  そのAKSECのネットワークでは毎日こんなことが起きるのです。例えば、AKSECのホームページにUPされている福井のA先生の出前授業の事例に秋田のB先生が新しい内容を付加して実践し結果をUP。それに触発された新居浜のC先生が更に工夫した教材を使ってすばらしい授業を実現する。その教材にはC先生の研究室の5年生D君のアイディアも含まれている。その出前授業を見ていた新居浜小学校のE先生がその考え方を取り入れた授業をやり始める……。これこそが知の共鳴、知のダイナミクスです。
 
ひとは誰でも自分独自の考えを抱え込んで積極的には出さないものです。自分だけのものにしようとします。しかし考えてください。自分を開示することでより多くの考えを知ることができる、思いもよらない世界を見ることが出来るのです。ひとつの考えに、10の考え方が返ってくる。それが「ナレッジコミュニティ」です。顔も知らない人達の知識に刺激を受け、またその人の想いに誰かが頷くのです。そこには出会いと感動があります。

  全国の高専ではすでに何年も前から様々な公開講座を開催し、さらに出前授業を実施されています。自作した実験器具や教材を貸し出されている高専もあります。それらを出発点にして、広くみんなから情報や考えを集められることから始めましょう。
 
そして、このAKSECは小中学校向けの理科教育の為だけではなく、当然高専教育の為にも機能し、また地域との産学の技術交流の全国組織としても活動するのです。一企業の投げかけたテーマに対して、全国の高専から次々に解決策や提案が集まる。 こんな夢のようなネットワークが高専という場でできればすばらしい事です。全国的な組織体としての高専だからこそできるのです。今春からは一独立行政法人なのですから。 たかだか5,000名のネットワークです。

あっという間です。
考え方を少し、すこし変えれば……。
“ピーン、あっまたAKSEC(アクセク)からメールが!”

こんな毎日が夢ではなく、もうすぐそこまで………